信託の新しいスキームについて

05.01

信託とは、一般的に財産を有する者(委託者)が自己または他人(受益者)のために、当該財産を管理者(受託者=信託銀行、又は営業行為を行わないなら、個人でも可)に管理させる制度です。

具体的に表現すると例えば、

委託者(不動産所有者)の土地に、受託者(信託銀行、個人)がマンション等を建設し、そこから発生する賃貸料等の収益を上げ、マンションの建設費、管理費等及び受託者の報酬を差し引いた残りの収益を受益者(信託の利益を得る者)に配分する契約です。

新信託法が平成18年に施行され、新しい信託の方法が幾つか提示されました。その内、実務で役に立ちそうな、遺言代用信託と後継ぎ遺贈型信託の説明をします。

 

①    遺言代用信託について

遺言でしかできない事を、信託を活用して生前に信託契約で実現するのが遺言代用信託です。つまり、自己の死亡時における財産の処分を遺言によって行う代わりに、生前に自己(委託者=不動産所有者)を受益者とする信託を設定し、信託契約上委託者の死亡時において、当然に委託者が受益権を失い信託契約上指定された者が、受益権を取得する旨を定めることなどによって、遺言と同様の目的を、相続手続きの外で実現しようとするものです。勿論遺言でも信託はできますが、遺言者が遺言を何時でも個人的に自由に取り消し変更できてしまう為、関係者にとって信託の実現性が難しい場合があります。ところが、この遺言代用信託のメリットは、遺言者が遺言を取り消し、変更できる民法上の規定は適用されないと考えます。なぜなら、遺言と違い委託者=遺言者が生前に信託契約を結び、法的効力が生じてるからです。又、信託契約を結ぶ際に、受益者を変更する場合は、必ず当初受益者死亡後の受益者(今回の事例では息子)に通知する事等を記載する事により、法的安定性は遺言より確保されると思います。

実務として考えられるケースとしては、不動産を多く所有している資産家が、自分が死んだら息子に受益権を与えるスキームを息子側から、相談された場合等だと思います。

なぜなら、遺言書は前述の様に、遺言者の意思で自由に取り消される可能性がありますが、遺言代用信託は遺言者1人では、信託契約を取り消す事が難しく、受益者にとって有利だからです。

 

②    後継ぎ遺贈型信託

この信託は、例えば会社社長の甲(委託者)が、自己の生存中は自らが受益者となり、甲の死亡後は妻乙にその受益権を遺贈、相続させるが、乙が死亡後は甲、乙の子供丙、丁,戊の内、会社経営者として有能な戊を、受益者とする定めのある信託です。遺言書では、最初の相続人の中で特定の人に遺贈、又は相続させる事は勿論可能ですが、その受遺者、相続を受けた方が亡くなった後、誰が相続するかは記載する事が出来ません。従がって乙の死亡後、誰が相続するかで遺産相続の争いが発生するかも知れません。この後継ぎ遺贈型信託は、その様な遺産相続争いを避け、有能な人に事業を引き継がせる事が可能になると思います。

尚、信託契約の受益者の権利は信託契約後30年までしか認められません。

 

以上、平成18年信託法改正に伴い、現在注目されている信託スキームについて、簡単に記述致しました。又、先日のご質問の中で、委託者は会社でも可能であるかとの件につきましては、遺言代用信託、後継ぎ遺贈型信託共に遺言書を意識しているので、自然人だけが可能かと思います。

又、上記信託スキームを使用する際は、まだ新しい手法であり、実例が乏しい為、税務面、その他配慮する事が必要かと思います。

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